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感想文・・・
「これからの店舗デザインのテーマ」
‐カーサ商業建築研究所 山本氏の講演会を聞いて
広島工業大学環境学部環境デザイン学科 田島佳也



  今回の講演会では、山本氏の店舗設計についての考え方を、山本氏が設計されたスペインの店舗や、日本で山本氏が経営するチカチコという子供玩具販売の店舗を例にお話されました。その中で山本氏は店舗作りには「人のこころ」が何より大切だとおっしゃいました。つまり、人が使いやすい機能を大切にし、人の心に感動やオーラを与え、店主と共に店も成長し一人歩きしない店舗作りが必要だとおっしゃっていました。また、この「人のこころ」を考える上で必要不可欠なことは日本の伝統的文化を振り返り、生かしていくことだと強くおっしゃっていました。私がこの講演会のお話の中で一番印象に残ったことは、「日本のアイデンティティ・精神文化とは何なのか」ということです。普段、日本のデザインのことについてあまり考えたことのなかった私にとって、山本氏のお話は日本の伝統的な美意識について考え直すきっかけになりました。
  山本氏による日本の美学とは、「不統一の美学」「余白の美学」であり、これら日本の伝統的な美学は、光の質などから生まれたと考えられているそうです。不統一の美学とは、シンメトリーを美として考える西洋とは違い、日本では統一をくずし、裏に秘められた神秘性を美としてとらえる美学です。また、余白の美学とは、何もないところに精神が宿り、そこに美を感じる美学だそうです。この日本の美学・デザインはスペインなどの他国でも認められており、デザインを学ぶにおいて避けて通れないものになっているにも関わらず、日本は外国に影響され、日本の美学を忘れているのではないかと山本氏はおっしゃっていました。
 私はこのお話を聞いたとき、ある一人の外国人を思い出しました。彼は日本の和菓子を見て、「美しい!この和菓子の“葛”の透かし方は日本人にしかできない。この透かしの感覚は外国人にはない。」と言いました。私はそのとき初めて、和菓子のなかの“透かし”という、とても小さなものだけどすばらしい日本の美学を見つめなおしました。外国人から指摘されて始めて日本の美学を感じる、というのは恥ずかしい気もするけど、現在の日本では、日本人なのに日本のデザインのことを知らない・興味がないという人が大半なのが現状だと思います。しかし、もっと日本の伝統的な美学に誇りを持ち、まずは私たち日本人が見つめなおし、日本をもっと多くの国にアピールするべきなのだと、今回の講演会を聞いて思いました。良いデザインとは、日本人が外国の真似事だけをしてデザインするのではなく、日本のことを知り、日本の考え方を生かしてデザインすることが、結果的に良いデザインを考えられるのだと思います。
 山本氏の、「すばらしいデザインとは、人の心に感動・オーラを与えるものであり、何より人のこころを大切にしなければならない」という言葉がとても心に残りました。
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チカチコ
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