------
1JI'CS
/
エコデザイン
環境問題と三人の米国女性
014
- - - Mar/2001
小原 誠
文化女子大学

■テーマ to indexes

  環境問題に社会の関心が集まり始めているが、この事に警鐘を与えたE.スワロー、R.カーソン、S.コルボーンの三人の米国女性について触れてみたい。これまでの社会では、男性はもっぱらモノを作る側の立場に立つこととなり、女性はこれを使う立場に立って来た。これまで男は組み込まれた社会の中で、建て前で動き、女は自分たちの生活のために本音で行動したといってよかろう。洞察力に優れたこの三人の米国女性が、エコロジーを提唱し、化学薬品による環境破壊を訴え、環境ホルモンの危険性に警鐘をならしたとしても不思議とは思えない。
  エコロジーという言葉は米国女性科学者エレン・スワロー(1842-1911)により家政学の拠り所として提唱された。この言葉自体はドイツ人E.H.ヘッケル(1834-1919)の造語で生態学を指すが、これを環境として捉えた人こそ外ならぬ彼女である。訳書の序文によれば「個人および家族の生活を最も中核的なエコシステムとしてとらえ、科学とテクノロジーの発展が生み出すモノ(環境)を、人間にとって真に有用なものとして相互作用させる…健康や安全など、生活にとって基本的な価値を保全し確立する…ために人力した」(『エコロジーの誕生』)とある。そしてそれがナント百年以上前のことだったとは驚くべき予見といわねばならない。
 開発当時には無害とされた農薬が、自然の生態系を壊し、人間生活にも大きな影響を与えることをその著書『沈黙の春』(1962年)で衝撃的に指摘したのが米国の女性科学評論家で作家でもあるレイチェル・カ一ソン(1907-1964)である。彼女は1000編に及ぶ多くの自然科学論文を調べ、多くの農薬や殺虫剤が土地を汚染し、生物の食物連鎖を通じて濃縮され、多種類の生物を滅ぽし、人間にもその影響が及び、悪質な遺伝的障害が発生する可能性があることを指摘したのである。
 米軍がべトナム戦争では、枯れ葉作戦と称して多量の農薬を散布した結果、現地では奇形児の発生が急増し、米国に帰還した兵士の中にも身体の不調を訴える者が少くなかった。この事実をシーア・コルボーンは調査によって解明し、農薬などが遺伝子攪乱物質、いわゆる環境ホルモンとして人体に悪影響を与えることを著書『奪われし未来』(1996年)で公表し、米国の責任を問うたのである。
 今後の社会で、女性が男性の職場に進出し、このような視点の違いも縮小することとなるかも知れないが、それでもなお何か二つの性の間の本質的な違いが見えるような気がする。若い女性達に、造る側の論理ではなく、使う側の論理でモノを見る研ぎ澄まされた目を養って欲しいものである。
(文化女子大学「図書館だよりNo.126」より、カットはターシャチューダー「手作りの世界」から)
-
-

日本インテリア学会中国四国支部